近年、巷ではミックス犬ブームが起こり、街中のペットショップでもミックス犬を見かける機会が増えました。
「ご家族が決まりました!」という札が貼ってある生後2,3か月の元気いっぱいなワンちゃんがいる一方、ショーケースの端っこには、生後半年近く経っているであろうワンちゃんも存在しています。
一般的に売れ残りとは主に生後半年以上の月齢で、飼い主さんがみつからない子犬のこと。
その場合、ショップ側は生体価格を引き下げて販売するようですが、それでも次から次へと入ってくる子犬たちの方が人気が集まりやすいため、月齢が経ってしまっている子は売れ残ってしまう事が多いようです。
では、ペットショップで売れ残りとなってしまったワンちゃんはどうなってしまうのでしょうか?
保健所が引き取り、そのまま殺処分されていくのを想像し「かわいそう」「ひどい」と感じる方も多いと思います。
でも実際のところはどうなんでしょうか?
今回はペットショップで売れ残ってしまったミックス犬の殺処分について、変化しつつある保健所の現状、また引き取り業者の実態について解説していきますので、最後までこの記事を読んで下さると嬉しいです!
Contents
ミックス犬売れ残りは殺処分されるの?
レアすぎるミックス犬の4歳!
ボストン×シーズーの「しゅーる」💚
ペットショップの売れ残りでした💦
こんなに可愛いのにね〜🤣
マイペースだけど、
たぶん1番優しくて大人🤔
これこそ個性、唯一無二✨#ボストンテリア
#シーズー
#ミックス犬 pic.twitter.com/qTKP0mvyZ6— ちの@アニマルアカウント🐭 (@0829Meet) December 11, 2021
最初に取り上げるのは、ミックス犬に限らず犬や猫全般における殺処分の問題です。
ペットショップでの売れ残った犬は必ずしも保健所に連れて行かれて、すぐに殺処分を受けるものなのでしょうか?
実はこの問題は2012年の動物愛護法の改正によって、大きく変化を遂げました。
次の項目で詳しく解説していきます。
犬の殺処分が減ってきている?
一見可哀想ですが、これは茨城県ができる生かす為の努力の表れかと。
茨城県では昨年度、殺処分数ゼロを達成。しかも、攻撃性等で譲渡に適さないとされた犬も含めて❗️
ワーストから民間団体と連携し生かす為の取組みを行ってきました。その結果です。
再び殺処分が増えないようご支援お願いします📣 https://t.co/kOb0H2IVkt— 調布地域猫の会(市登録ボランティアではありません) (@ChofuChiikiNeko) May 29, 2022
先ほど述べた、2012年に改正された動物愛護法。
それ以前は、ペットショップで売れ残った子やブリーダーの元で産まれてくる先天的疾患を持つ売り物にならない子犬・繁殖リタイア犬などを保健所で引き取り、殺処分が行われていたのは事実です。
その他にも、一般家庭で飼育放棄された犬や猫の処分なども全て保健所が請け負っていたとか。
しかし、この2012年の改正による動物取扱業者の適正化や規制強化に伴って、保健所はショップやブリーダーの元から送られてくる犬猫の引き取りを拒否出来るようになりました。
また、安易に手放そうとしている飼い主さんの申し出も断れるようになったのです。
またこの頃には民間の動物愛護団体などが増えて、直接飼い主さんからペットを引き取るなどした効果もあって、かなり殺処分の数が減ったとも言われています。
ちなみに環境省が出しているデータによると、2004年度の犬の殺処分数が155,870件だったのに対し、2019年度では5,635件と、かなり減少しているのが分かりますよね?
これまでペット後進国であるとされてきた日本ですが、こういった犬・猫の殺処分を減らして、ゆくゆくは殺処分ゼロを目指そうという取り組みも行われているので、少しずつではありますが良い方向に向かっているのではないかと期待したいところです。
売れ残った犬の行先とは?
保健所に持ち込まれる件数自体も減り、殺処分数も減少している現在。
ペットショップで売れ残ってしまった子たちは一体どうなってしまうのか気になりますよね?
よりリアルな現状を知っていただくために、元生体販売業者だった方による解説動画をまずはご覧ください。
この方は現在は生体販売を行わないペットショップを経営されているそうですが、売れ残った犬の行先は主にこの6つが考えられるとのこと。
①他の店(格安店)に移し、価格を下げて販売する。
②メス犬の場合は繁殖犬として、直接取引をしていたブリーダーに返す。
③引き取り業者に引き取ってもらう。
④無断に大量放棄する。
⑤譲渡する。
⑥自分のところで殺処分する。
解説によると、圧倒的に①のパターンが多いようですね。
高級店で売れ残っても系列の格安店で価格を下げる、もしくは大手のチェーン店であれば、店舗や地域を変えれば売れたりする場合もあるという事です。
またメス犬の場合、繁殖犬としてブリーダーに戻されるというのも、業界関係者だからこそ知っている内情なのでしょう。
③の引き取り業者については、また次の項目で細かく深堀していきます。
④~⑥に関しては、最近ではあまり例が少ない事と、今回のテーマから外れているので、ここでは触れません。
売れ残り犬のだいたいの行先が分かりましたが、この②の繁殖犬となる場合には何やら例外もあるようで…。
次の項目でそこら辺の事情について詳しくお話していきたいと思います。
ミックス犬は例外
おはようございます
昨日は、くるみさんの3回目のうちの子記念日でした🎵
売れ残りでボサボサだったくるみさん…ポツンって片隅にいたね💦
今では我が家の元気で甘えん坊な次男くんです❤️
今日もよろしくお願いします#マルプー #ミックス犬 #うちの子 #猫 #記念日 pic.twitter.com/A1P9g5ZlEx
— なお (@nao1tm) April 25, 2020
これまではペットショップやブリーダーの元で売れ残りとなったワンちゃん達のその後の行先について説明してみました。
ただ、ミックス犬に関してのみ例外があります。
それは、多くのペットショップの店員やブリーダーさんも口をそろえて「ミックス犬は一代限りの犬」という勧めるところに大きな関係があるようです。
そもそもミックス犬は血統が異なる親犬同士の交配の結果、産まれてきたという経緯があるのは皆さんもご存じの通り。
それでは、ミックス犬の繁殖はなぜ避けられているのか。
それはミックス犬自体に顕れなかった先天的疾患などが隔世遺伝によって、次世代のミックス犬の子孫に大きく影響してしまう可能性が大きいからです。
ミックス犬は血統が付いていないために、当然ながら血統書が存在しません。
血統書はその犬の両親やまたそれ以上の子孫が記載されている、人間で例えると家系図にあたるものですが、血統書が存在することによって、ある程度両親の犬からの病歴などを調べることが可能。
でも、それがミックス犬には存在しないため、産まれてくるミックス犬の子犬については起りうる疾患が不明な上に、奇形な犬や衰弱している犬が産まれやすいと言われています。
奇形の犬や病弱な犬は産まれてきたとしても商品としての価値はなく、ブリーダーにしてみれば不要な在庫を抱えてしまうデメリットにしかなりません。
個人的には商品だの在庫だのという例えはしたくありませんが、それが現実です。
それ故に、ブリーダー側でミックス犬を繁殖犬としての引き取ることが困難だとされている理由です。
ただ前述のとおり、売れ残ったワンちゃんは他の店舗への移動などにより、価格が下げられたタイミングなどで家族が見つかるケースもあるので、ミックス犬に関しても同様なことが言えるのではないでしょうか?
保健所や引き取り業者はひどいしかわいそう?
友人が捨て犬を拾いました。東京都大田区の警察署で預かってもらっています。1週間経っても飼い主が現れない場合、保健所にいってしまいます。どなたか引き取れませんか?
チワワ様のミックス犬、雄、静かで吠えません。
10歳以上だと思われます。
よろしくお願いします。#拡散RT希望 #捨て犬 pic.twitter.com/MCeP8hUVZB— もも@生き様が面白い友人 (@oyc_ut) November 15, 2019
2012年の動物愛護法改正で、行政での犬猫の引き取り及び殺処分の基準が厳しくなってきたことは前の項目でお伝えした通り。
その頃から保健所に代わり、新たに「引き取り屋」と呼ばれる業者が業界内で暗躍するようになりました。
ここでは「引き取り屋」について解説していきたいと思います。
引き取り業者の実態と犬の現実
文春オンラインが、拙著『「奴隷」になった犬、そして猫』について取り上げてくれました。こちらは1回目で、拙著の中から「引き取り屋」についての部分を抜粋しています。
#文春オンライン https://t.co/O7XDim9lhz
— 太田匡彦 (@qEaLO0nvwWqCKMx) June 22, 2021
ワンちゃんを飼われている方なら「引き取り屋」という言葉を一度くらいは聞いたことがあるかもしれません。
その名の通り、行き場を失ったワンちゃんを引き取る業者ではありますが、引き取るだけなら一見何の問題もなさそうに見えますよね?
でも、その実態は思わず耳を塞ぎたくなるような内容です。
2012年の法改正によって、保健所はペットショップやブリーダーからの犬の引き取りを拒否することができるようになった一方で、動物の終生飼養の原則に従わなければいけないというルールにより、むやみに処分することが出来なくなりました。
そこで新たに「引き取り屋」と呼ばれる商売を始める人々が増え、行き場のない犬や猫たちを1頭につき数千円~数万円で引き取るというペットビジネスが成立したのです。
実際に、引き取り屋に引き取られた犬達は殺されこそしませんが、その多くは一生ケージの中に閉じ込められ、まともに散歩にも連れて行ってもらえません。
数人のずさんな管理の下で、何十匹、何百匹という数の犬の面倒を見れる訳もなく、ケージの中は糞尿まみれで、病気になる子がいても病院に連れて行ってもらうことも出来ない。
まさに生きながら飼い殺しにされる訳です。
実際に、衛生的な環境で適切に飼育されていない(虐待)ことが原因で摘発された業者もありますが、表に出ていないだけで他にもこのようなケースはあちこちで多くあるのではないかと思います。
引き取ること自体が法に引っかかっている訳ではないので、普段ニュースで見かけることも少なく、明るみに出ることもありません。
引き取り屋に引き取られたワンちゃん達の運命が残酷すぎて耳を塞ぎたくなりますよね。
でも単純に殺処分自体が少なくなったといっても、こういった闇のビジネスがいまだに横行している以上、ペットを迎える際にはこのような可哀そうな犬や猫たちが存在するという事を決して忘れてはなりません。
不幸なミックス犬を減らすために人間が出来ること
【過去記事】【突然閃いた】~ちんねん がうちにくるまで~『ちんねん』は私にとって人生2匹目のワンコです。最初のワンコは私が10歳の時に迎えた保健所に連れていかれる寸前のミックス犬でした。私はその子が可愛そうで仕方なくて、うちで引き取りたいと言ったのでした。 https://t.co/fe9kzZl8nt
— 樫村慧 (@kei_kashimura) March 27, 2021
これまで保健所で殺処分をしていた時代から、法改正を経て、引き取り屋というペットビジネスが介在するようになった経緯をお話してきました。
もちろん、保健所で殺処分される犬や引き取り屋で飼い殺しにされる犬は可哀想と誰しもが思うでしょう。
でも、表面的な部分だけを見てしまっていて、本質的な事を忘れてはいないでしょうか。
ペットショップやブリーダーという職業は犬を欲しいと求める人間がいる限り、決して無くなくなることはありません。
そして、犬に対して知識不足のまま飼ってしまって、その結果手に負えないからと手放す飼い主さんも少なくないでしょう。
ここ10年ほどミックス犬のブームが起こり、唯一無二の個性を求めて様々なミックス犬の交配が行われた結果、可愛い子犬には家族が見つかる一方で、身体の弱い子や奇形の子は世に出される事もないという事実も存在します。
もちろん、保健所の殺処分やそれに代わる引き取り屋の存在に対して、ひどいと感じるのは当然の話。
しかしながら、犬を欲しいという人間の安易な考えと、お金を払えば簡単に手に入れられるという環境がそのような状況を招いてしまっていることを忘れてはいけません。
「可愛いから」「唯一無二の存在だから」「珍しいから」という理由は犬を選ぶ時の判断材料として決して悪いことではありませんが、その裏側にあるペット業界の深い闇があるのを念頭に入れて、生涯家族として大切に暮らしてほしいものです。
まとめ
縁
ミックス犬♂推定13才迷子犬として保健所に保護されていたシニア犬です
物や食べ物への執着が強く、集中している時に触ると怒ってしまいます
甘えてる時は他の犬に対して怒りますが、普段はとっても甘えん坊さんのおとなしい子です
ご理解の上縁ちゃんだけで可愛がってくださる里親様募集中 pic.twitter.com/ZoV8znG2fL
— 保護犬パーク長居店☆屋内ドッグラン&トリミングサロン(ラブファイブ:保護犬カフェ系列) (@WanWanWan8611) May 17, 2020
今回はミックス犬の売れ残りは殺処分されるのか?保健所や引き取り業者はひどいしかわいそう、というテーマでお話してきました。
保健所での殺処分自体は少なくなってきてはいますが、その反面引き取り業者が存在することによって、犬によってはますます残酷でかわいそうな環境に追いやられている事が分かって頂けたかと思います。
これはミックス犬に限った話ではありませんが、必要以上に繁殖させた結果の先に売れ残りの子犬たちもいる訳で、あらためて犬の幸せについて考えさせられる内容でした。
悪質な業者が悪いのはもちろんですが、犬を飼う飼い主側も安易に手に入れたり、無責任な理由で手放したりなどしないよう、大切な家族として犬の生涯最後まで面倒を見る覚悟を当たり前に持てるようになることを願っています。